硬水と軟水は何が違うのか
湧き水を紹介する文章で「まろやかな軟水」といった表現を見かけます。
この「硬い/軟らかい」は感覚の話ではなく、測って数字で表せるものです。
先に結論です。
- 硬度とは、水に溶けているカルシウムとマグネシウムの量を、炭酸カルシウムの量に換算したものです。
- 違いを生むのは、主に水が通ってきた地質です。
石灰岩の多い土地では硬度が高くなります。 - 日本の水道水の基準は300mg/L以下。
おいしい水の要件としては10〜100mg/Lが挙げられています。
硬度とは何か
水中のカルシウム塩及びマグネシウム塩をこれに対応する炭酸カルシウム(CaCO3)量(mg/L)に換算したものである。 環境省「硬度(カルシウム、マグネシウム等)」(水質基準の評価資料)
カルシウムとマグネシウムがどれだけ溶けているかを、ひとつの数字にまとめたものが硬度です。
数字が大きいほど硬い水です。
何が硬さを決めるのか
水中のカルシウム塩及びマグネシウム塩は、主として地質によるものであるが、海水、工場排水、下水などの混入によることもある。同
「主として地質による」と書かれています。
水が地下を通るあいだに、周りの岩から成分が溶け出すためです。
だから同じ日本でも、土地によって水の硬さが変わります。
分かりやすい例が沖縄です。
沖縄県企業局は、県内のある地域の地下水について「琉球石灰岩質の影響で、硬度が高いのが特徴です」と説明しています。
石灰岩はカルシウムを多く含む岩なので、そこを通った水は硬くなります。
詳しくは沖縄の湧き水「カー」とはで触れています。
日本の基準は2つある
水道水について、国は硬度に関する数字を2種類示しています。
役割が違うので、混同しないほうがよいものです。
| 区分 | 数値 | 意味 |
|---|---|---|
| 水質基準項目 | 300mg/L以下 | 水道水が満たすべき基準。評価資料によれば「石けんの泡立ち等への影響を防止する観点から」設定されたものです |
| 水質管理目標設定項目 | 10mg/L以上100mg/L以下 | 水質管理上留意すべき項目としての目標値。おいしい水の観点から設定されています |
出典:環境省「水質基準項目と基準値(52項目)」および上記の評価資料。
評価資料には「おいしい水の水質要件(mg/l)10~100(昭和60年おいしい水研究会検討結果)」との記載もあります。
300という数字は「これを超えると危険」という意味ではありません。
石けんが泡立ちにくくなるなど、使い勝手の観点から決められたものです。
一方の10〜100は、おいしく飲める範囲として挙げられた目標値です。
硬いと何が起きるか、軟らかいと何が起きるか
同じ評価資料には、WHOの評価として次のような記述があります。
硬度が約200mg/Lを超えるような水は、pHやアルカリ度のような他の水質項目との相互作用により、配水システム中にスケールを付着させたり、石けんの消費量を増加させたりする。
一方、硬度が約100mg/L以下の軟水は配水管を腐食させやすく、その結果飲料水中にカドミウム、銅、鉛、亜鉛のような重金属を溶出させることになる。同(WHO(1996)の評価として引用されているもの)
味については「カルシウムの味覚の限界値は100~300mg/Lの範囲であり、会合陰イオンに依存する」とされ、500mg/Lを超える硬度は「一般的には美学的に受け入れられない」と評価されています。
硬すぎる水は、単純に飲みにくいわけです。
健康との関係は「分かっていない」
硬水・軟水については健康にまつわる話をよく見かけますが、国の資料が引くWHOの評価は、はっきりと慎重です。
水の硬度がヒトの健康に有害な影響を与えるという明確な証拠はない。
対照的に、多くの疫学的研究の結果から、水の硬度には疾病を防護する作用があるとされている。
しかしながら、入手したデータは因果関係を証明するには不十分であり、従って健康影響に関する指針値は提案されない。同(WHOの評価として引用されているもの)
「害があるとは言えない」「良い影響があるという研究はあるが、因果関係は証明できていない」。
だからこそ、健康を理由にした指針値は作られていません。
「軟水は体にやさしい」「硬水は〇〇に効く」という説明をよく見かけますが、そう言い切れる公的な資料は、探した範囲では見つかりませんでした。
ここでもそれ以上のことは書きません。
湧き水の硬度は分かるのか
当サイトが収録している3,022件について、硬度のデータはありません。
自治体が湧水の水質検査結果を公表していても、硬度まで載っていることは多くありません。
湧き水の硬さを知りたい場合は、その湧水がある土地の地質を手がかりにするのが現実的です。
石灰岩地帯(鍾乳洞のある地域など)では硬度が高くなりやすく、沖縄のように島全体が石灰岩に覆われている地域では、その傾向がはっきり出ます。
当サイトは沖縄県から138件を収録しています。
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