湧き水は飲めるのか

地中にしみ込んだ水が地層を通り、崖の下から湧き出して水盤にたまるまでを表した断面のイラスト

当サイトに収録している3,022か所の湧水・名水について、国・都道府県・市町村が公表している資料を1件ずつ当たって調べました。
出典の最終確認は2026年8月11日時点です。
この3,022か所は日本の湧水を網羅した数ではありませんなぜ網羅できないのか)。

先に結論です。

  • 公的機関が水質検査にもとづいて「飲用可」と確認できたのは16か所(収録分の0.5%)だけでした。
  • ただしこれは「残りが飲めない」という意味ではありません。
    飲用について何らかの記述を確認できたのが641件(21%)で、残る2,381件は、記述そのものが見つかりません。
  • 最も多いのは「公的機関が保証せず」589件。
    これが日本の湧水の標準的な扱いです。

収録3,022か所の内訳

飲用の扱い件数割合どういう状態か
不明2,38178.8%公表資料に飲用の記述が見つからないもの。調べていないのではなく、探しても無いという意味です
公的機関が保証せず58919.5%「飲用に適することを保証しない」と但し書きがあるもの。禁止ではありません
飲用不可200.7%「飲用不適」「飲まないでください」と明示されているもの
飲用可(検査済)160.5%自治体が水質検査の結果を公表し、基準に適合していると明示しているもの
煮沸をおすすめ160.5%「生水なので煮沸してから」と公的資料に書かれているもの

名水百選に選ばれていても、飲用は保証されていない

「名水百選なら飲めるはず」と思われがちですが、そうではありません。
選定した環境省自身が、両サイトにはっきりと但し書きを載せています。

選定された名水は飲用に適することを保証するものではありませんので、飲用に供される場合は、その名水が所在する自治体にご確認ください。 環境省「名水百選」/「平成の名水百選

当サイトで集計すると、実際の内訳はこうなります。

区分不明飲用可(検査済)煮沸をおすすめ飲用不可公的機関が保証せず
昭和の名水百選036190
平成の名水百選001099

平成の名水百選100件では、飲用可と確認できたものが1件もありません。
昭和・平成いずれも、大半が「公的機関が保証せず」に分類されます。
名水として選ばれた理由は、水質・水量・親しまれ方・保全活動などであって、飲用の安全性ではありません。

なぜ「飲用可」と書かれないのか

これは資料が足りないのではなく、構造的な理由によります。
湧水は水道水と違い、24時間管理されているわけではありません。
雨のあとに濁ることもあれば、季節で水質が変わることもあります。
そのため公的機関には、飲用を保証する動機がありません。

はっきり分かるのは、「飲用不適」「煮沸してください」は明言されるのに、「飲用可」はほとんど書かれないという非対称です。
検査して基準に適合していても、保証はしないと明記する自治体もあります。

上記の調査結果は、採水した時点のものです。
水質は変化していく可能性があり、安全を保障するものではありません。 神奈川県秦野市「湧水地の水質検査結果

秦野市は市内の湧水地について検査結果を判定つきで公表していますが、同じページでこう断っています。
当サイトが飲用可(検査済)を付けるのは、自治体が検査結果と適合を明示している場合だけです。
検査に通っていても、市が保証を否定しているなら公的機関が保証せずとして扱っています。

公的に「飲用可」と確認できた16か所

自治体が水質検査の結果を公表し、飲用できると明示しているものです。
出典と確認日を1件ずつ添えています。
ただしこれは検査した時点の状態であって、いつ行っても安全という意味ではありません。

青森県弘前市1件

富田の清水青森県弘前市紙漉町5-2出典

千葉県君津市5件

久留里街道沿いの銘水千葉県君津市久留里市場出典
久留里観光交流センター前水汲み広場千葉県君津市久留里市場195-4出典
新町の小井戸千葉県君津市久留里市場746付近出典
高澤の井戸千葉県君津市久留里出典
藤平酒造の井戸千葉県君津市久留里市場147出典

富山県中新川郡上市町3件

穴の谷の霊水富山県中新川郡上市町黒川出典
大岩山日石寺の藤水富山県中新川郡上市町大岩163出典
弘法大師の清水富山県中新川郡上市町護摩堂出典

長野県下水内郡栄村1件

北野天満温泉湧水長野県下水内郡栄村堺14655出典

長野県下高井郡野沢温泉村5件

坪山 湧水長野県下高井郡野沢温泉村坪山出典
八幡清水長野県下高井郡野沢温泉村豊郷6580出典
東大滝湧水長野県下高井郡野沢温泉村東大滝出典
虫生 湧水長野県下高井郡野沢温泉村虫生出典
六軒清水長野県下高井郡野沢温泉村豊郷松葉出典

愛媛県西条市1件

うちぬき愛媛県西条市神拝出典

逆に、飲まないほうがよい場所もはっきりしている

飲用不可 が20件、煮沸をおすすめ が16件あります。
大腸菌が検出された、水源が農地に近い、といった具体的な理由が書かれていることが多く、こちらは公的機関がはっきり書いてくれます。
各スポットのページで出典を確認できます。

同じ日本でも、県によって分かることが大きく違う

飲用について何か分かる割合は、県ごとに極端な差があります。
これは湧水の質の差ではなく、県が資料を公表しているかどうかの差です。
県が選定制度を持ち、そこに但し書きを1本書いていれば、それだけで数十件が一度に埋まります。

分かっている割合が高い県

富山県68/72件94%
島根県89/102件87%
鳥取県29/42件69%
新潟県69/111件62%
岐阜県62/102件61%

分かっている割合が低い県

沖縄県4/138件3%
山形県3/99件3%
秋田県5/158件3%
茨城県2/63件3%
福島県5/146件3%

※登録が30件以上ある県のみ。
母数が小さいと割合が跳ねるためです。

現地で汲むときに確かめること

  • 湧き口に掲示があれば、それが最優先です。
    自治体の掲示は現地の最新状況を反映しています
  • 雨のあと・雪解けの時期は濁りやすく、水質が変わります
  • 持ち帰る場合は煮沸してから使うのが確実です。
    湧水は塩素消毒されていないため、汲んだあとに雑菌が増えます
  • 汲む量やポリタンクの持ち込みを制限している場所があります。
    当サイトでは分かる範囲で「汲める」「汲める(制限あり)」「汲めない」を各ページに記載しています

この3,022か所は何なのか

この3,022か所は、当サイトが独自に集めて収録しているものであって、日本にある湧水を網羅した数ではありません。
したがってここに出てくる割合は、あくまで当サイトの収録分における割合です。

では日本全体では何か所あるのか。
その数字は、誰も持っていません。
湧水を所管する環境省自身が、次のように述べています。

湧水形態の多様性を踏まえると、湧水件数の対象となる湧水の集計基準を全国一律に定めることは困難である。
したがって、湧水件数の集計基準は地域ごとに設定されるものであり、この意味から湧水把握件数は、同一地域における豊かな湧水の維持に関する経年的な環境指標と見なされるべきものである。 環境省 水・大気環境局「湧水保全・復活ガイドライン」(平成22年3月)4ページ

湧水は、崖の下から染み出すものもあれば、池や湿地になっているもの、扇状地の端で一帯から湧き出しているものもあります。
どこからどこまでを1か所と数えるかが決められないため、全国一律の総数が出せないのです。

実際、環境省が全国の自治体に対して行った令和6年度の調査でも、把握件数は15,856件とされていますが、これは「湧水の件数を把握している市区町村」から回答があったぶんの合計で、やはり日本の湧水すべてではありません(環境省「湧水把握件数」)。

このページの件数は、環境省の調査や各自治体の資料を1件ずつ当たって数えたものです。
数のうえでは環境省の把握件数に及びませんが、そのかわり、どの1件も「どこの誰がそう言っているのか」までたどれます。
ページを開くたびに数え直しているので、調べが進めば数字も変わります。

免責:当サイトは飲用の可否を判断するものではありません。
掲載しているのは、公的機関が公表している内容と、その出典です。
水質は時期や天候で変化します。
実際に飲用される場合は、現地の掲示と所在自治体の最新情報をご確認のうえ、自己責任でお願いいたします。

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