そもそも湧水とは何なのか
環境省は、資料の中で湧水をはっきり定義しています。
ポンプで汲み上げた水は湧水に入らない、といったことまで書かれています。
先に結論です。
- 湧水とは「地下水が自然状態で地表に流出したもの、もしくは地表水に流入するもの」(環境省)です。
- ポンプで汲み上げた水は湧水ではありません。
ただし、掘った穴から自然に噴き出すもの(自噴)は湧水に含まれます。 - 湧水は「地下水の露頭」、つまり地面の下を流れている水が地表に顔を出している場所です。
定義
環境省は、湧水の保全のための資料で次のように定義しています。
本ガイドラインでは湧水を「地下水が自然状態で地表に流出したもの、もしくは地表水に流入するもの」と定義する。 環境省 水・大気環境局「湧水保全・復活ガイドライン」(平成22年3月)4ページ
同じページには、厳密に定義することは難しいとも書かれています。
湧き方も規模も様々だからです。
そのうえで、上の言い方を「広義の定義」として置いています。
湧水に入るもの、入らないもの
この定義には、続けて次のような但し書きが付いています。
動力で揚水(ポンプアップ)した地下水や、温泉水は対象外とするが、人工的に掘削等を行った場合でも、自噴もしくは掘削面から自然に湧出したものは広義の湧水に含まれるものとする。同 4ページ
| 扱い | どういうものか |
|---|---|
| 湧水に入る | 崖の下や谷から自然に流れ出しているもの。井戸を掘った場合でも、自分の力で噴き出しているもの(自噴井) |
| 入らない | ポンプで汲み上げている地下水。動力を使っている時点で「自然状態で流出」に当たらないため |
| 入らない | 温泉水。ただし温泉と湧水の線引きは見た目ほど単純ではありません(温泉と湧水はどう違うのか) |
湧水は「地下水の露頭」
同じ資料に、湧水をこう言い表した一文があります。
人間は地下水を直接目で見ることができないことから、湧水は地下水の流動状態を映す鏡(地下水の露頭)であるということができる。同 6ページ
地下水は地面の下を流れているので、ふだん見ることができません。
その水が地表に顔を出している場所が湧水です。
だから湧水が減ったり濁ったりすることは、その土地の地下水に何かが起きているという合図になります。
湧水が環境の指標に使われるのは、そのためです。
どうやって湧き出すのか
湧き出し方は、大きく3つに分けて説明されています。
| 湧き方 | しくみ |
|---|---|
| 地形と地下水面が交わる | 地下水が溜まっている面(地下水面)と、地面の形が交差するところで水が出ます。崖・谷・窪地で起こります |
| 自噴する | 水を通しにくい層に挟まれて圧力がかかった地下水(被圧地下水)が、出口を見つけて自力で噴き上がります |
| 岩の割れ目を通る | 溶岩や岩盤の割れ目(裂か)を水が通って出てきます。火山の周辺に多く見られます |
出典:同 8ページ「湧水の湧出形態」
地形によって7つのタイプに分けられる
同じ資料では、地形と地質に着目して湧水を7つに分類しています。
だから湧水を探すときは、その土地がどんな地形かを見ると見当がつきます。
| タイプ | 代表的な地形 | 湧き方・あり方 |
|---|---|---|
| 崖線(がいせん)タイプ | 台地・段丘 | 台地・段丘の崖の前面から湧き出す |
| 谷頭(こくとう)タイプ | 山地、丘陵地 | 馬蹄形などの谷の地形から湧き出す |
| 湿地・池タイプ | 高原、低地 | 低地で湧き出して湿地や池をつくる |
| 扇端(せんたん)タイプ | 扇状地 | 扇状地の端で地形と地下水面が交わる。湧いたり伏流したりを繰り返すこともある。被圧地下水が自噴する場合も |
| 火山タイプ | 火山山麓 | 溶岩の積み重なりや岩盤の割れ目を通って出る。被圧地下水が自噴する場合も |
| 傾斜丘陵地タイプ | 傾斜丘陵地 | 砂の層と泥の層が交互に傾いて重なっている。被圧地下水が自噴する場合も |
| その他 | 石灰岩地形など | 鍾乳洞など |
出典:同 9ページ「表2-1 湧水の分類」(表現は読みやすく改めています)
湧水は何に使われてきたか
湧水は、古くから地元の人々の生活用水や農業用水として大切に使われてきており、中小河川の水源となっているものもあります。 環境省「湧水保全ポータルサイト」
飲み水としてだけでなく、洗い場、田畑の水、川の源として使われてきました。
使う順番が決められていた例もあります。
青森県弘前市の富田の清水には水槽が6つ並んでおり、環境省の資料によれば「1・2番目は飲用、3番目は米・青物の洗い、洗面用、4番目は紙漉の材料や漬物を漬ける、5・6番目は洗濯、足洗い等」という決まりがあったとされています。
きれいな水を使う用途から順に、下流へ回していきます。
また、都市部の湧水は、うるおいの場としての役割も持っています。
湧水は減っている
環境省は、湧水が失われつつあることと、その原因を挙げています。
かん養域(雨水が地下にしみ込む場所)の都市化、過剰な地下水の汲み上げ、地下水汚染、湧水周辺のごみです。
地面がアスファルトで覆われると雨水がしみ込まなくなり、地下水が減り、やがて湧水が枯れます。
湧水を守るには、湧き口だけでなく、その水がしみ込んでいる場所まで含めて考える必要があります。
日本にどれくらいあるのか
全国の総数を示した数字はありません。
湧き方も規模も様々で、どこからどこまでを1か所と数えるかを全国一律に決められないためです。
環境省もその旨を明記しています。
詳しくは「湧き水は飲めるのか」の該当箇所で説明しています。
当サイトでは、環境省の調査や各自治体の公表資料をもとに、現在3,022か所を収録しています。
内訳は次のとおりです。
| 種別 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 湧水 | 2,777件 | 91.9% |
| 河川/渓谷 | 135件 | 4.5% |
| 滝 | 55件 | 1.8% |
| 湖沼/池 | 24件 | 0.8% |
| 地下水 | 16件 | 0.5% |
| 用水 | 9件 | 0.3% |
| その他 | 6件 | 0.2% |
湧水そのものが2,777件で、残りは河川・滝・湖沼など「名水」として選ばれた水辺です。
名水百選には川や滝も含まれるため、湧水だけの一覧にはなっていません。
収録件数の多い県
| 熊本県 | 178件 |
|---|---|
| 東京都 | 170件 |
| 秋田県 | 158件 |
| 福島県 | 146件 |
| 沖縄県 | 138件 |
これは「湧水が多い県」の順位ではありません。
県や市町村がどれだけ資料を公表しているかで収録数が変わるためです。
ほかの記事

公的機関の資料を1件ずつ当たって調べた、飲用可否の実態。名水百選でも飲用は保証されていません。

温泉法の定義では、冷たい湧水が温泉に当たることもあります。飲泉の許可の話まで。

「生水ですので煮沸を」と書かれている理由。国の通知と、実際に煮沸をすすめている自治体の例。

汲める場所と汲めない場所の一覧。「無料かどうか」は、じつはほとんど公表されていません。

容器入りの水は4つに分類されます。違いは水源ではなく処理の仕方。市販品の採水地の例も。

ヒージャー(樋川)、ウブガー、クラガー(暗川)。呼び名が示す、水と暮らしの結びつき。

硬度はカルシウムとマグネシウムの量。決めているのは主に地質です。日本の基準は2種類あります。
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