湧き水は煮沸したほうがいいのか

コップに汲んだ水を鍋で沸かすまでを表したイラスト

湧き水の案内板や自治体のページに、「生水ですので煮沸してから」と書かれていることがあります。
なぜそう書かれているのか、根拠をたどりました。

先に結論です。

  • 湧き水や井戸水は、水道水と違い、消毒されたうえで届けられる水ではありません。
  • 国は、大腸菌群が検出された飲用井戸について「煮沸してから飲用……するよう飲用指導を徹底する」という通知を出しています。
  • 当サイトが調べた範囲でも、16件で自治体などが煮沸をすすめていました。

「生水」とは何か

生水(なまみず)とは、沸かしていない水のことです。
湧き水をそのまま汲めば生水です。

水道水は、浄水場で処理と消毒をしたうえで各家庭に届けられます。
湧き水には、その工程がありません。
山や地層を通ってきた水がそのまま出てきているので、きれいに見えても、何が含まれているかは調べてみないと分かりません。

国が煮沸を指導している

厚生省(当時)は、飲用井戸の衛生について各自治体へ通知を出しています。
その中に、煮沸についての記述があります。

三 大腸菌群が検出された飲用井戸の利用者に対しては、その事実を周知するとともに、次の措置を講じられたいこと。
(一) 当該井戸の利用者が水道の給水区域内に居住している場合には、水道に接続するよう指導を徹底すること。
また、接続されるまでの間は、煮沸してから飲用その他の経口で摂取する用途に使用するよう飲用指導を徹底すること。
(二) 当該井戸の利用者が水道の給水区域外に居住している場合には、煮沸してから飲用その他の経口で摂取する用途に使用するよう飲用指導を徹底すること。 厚生省生活衛生局「飲用井戸及び受水槽の衛生確保について」(平成八年七月一八日 衛企第八一号・衛水第二二九号)

この通知が出された背景も、同じ文書に書かれています。

最近、病原性大腸菌等による感染症が多発しておりますが、飲用井戸及び受水槽により供給される飲用水についても、それらの感染症の原因となる微生物の感染媒体となるおそれがあることから、管理の徹底を図ることが必要であります。

煮沸がすすめられるのは、この微生物のためです。

なお、通知が書いているのは「飲用その他の経口で摂取する用途」です。
そのまま飲むことだけでなく、米をとぐ、野菜を洗うといった使い方も入ります。
口に入る水かどうかが線引きになっています。

井戸水は年に1回の検査が求められている

飲用に使う井戸については、定期的な水質検査も求められています。

定期の水質検査は、一般飲用井戸(設置者が専ら自己の居住の用に供する住宅のみに飲用水を供給するために設置するものを除く。)、業務用飲用井戸及び小規模受水槽水道にあつては一年以内ごとに一回行うものとするが、これ以外のものにあつても一年以内ごとに一回行うことが望ましい。 厚生省生活衛生局長通知「飲用井戸等衛生対策要領の実施について」(昭和六二年一月二九日 衛水第一二号)

この定期検査の項目には一般細菌と大腸菌が含まれています。
裏を返せば、検査をしていない水は、その状態が分かっていません。
湧き水の多くは、この「分かっていない」状態にあります。
当サイトが全国の湧水を調べた結果でも、飲用について公的な記述が見つかったものは一部にとどまりました(湧き水は飲めるのか)。

実際に煮沸がすすめられている場所

当サイトに収録している3,022件のうち、公的な資料で煮沸がすすめられていたのは16件です。
出典を添えて挙げます。

名称場所出典
渾神の清水青森県平川市唐竹 滝の沢2-1出典
落人の里の水青森県十和田市深持舟沢出典
桂水大明神の水青森県十和田市深持後平21出典
キッコイジャの水青森県十和田市沢田蒼前平29-2出典
白上の湧水青森県十和田市相坂白上327-2出典
神明宮のトヨの水青森県西津軽郡深浦町深浦浜町75出典
桂葉清水宮城県栗原市高清水長福寺28出典
中江の霊水富山県南砺市東中江出典
妃の清水富山県南砺市安居出典
不動滝の霊水富山県南砺市大谷出典
丸池富山県南砺市新屋560出典
脇谷の水富山県南砺市利賀村栗当出典
御手洗池石川県七尾市三引町出典
恵利原の水穴(天の岩戸)三重県志摩市磯部町恵利原出典
安徳水高知県高岡郡越知町越知丁 横倉山出典
不老水福岡県福岡市東区香椎4-16-1香椎宮出典

書き方は場所によって違います。
「生水ですので必ず煮沸消毒のうえご利用ください」と明記しているところもあれば、「煮沸消毒するなどし、自己責任でご使用ください」としているところもあります。
いずれも、そのまま飲むことを前提にしていないという点は共通しています。

煮沸ではなく「飲まないで」とされている場所もある

煮沸をすすめるのではなく、飲用しないよう明示されているものが20件あります。
大腸菌が検出された、基準値を超えたなど、具体的な理由が示されていることが多いです。

名称場所出典
湯沢の薬師様青森県下北郡東通村砂子又小目名沢(上田代)出典
八幡清水岩手県胆沢郡金ケ崎町西根達小路出典
高清水霊泉秋田県秋田市寺内神屋敷15-17出典
矢瀬湧水群馬県利根郡みなかみ町月夜野2936出典
お鷹の道・真姿の池湧水群東京都国分寺市東元町3丁目、西元町1丁目出典
若竹の泉神奈川県秦野市千村882出典
殿様生水石川県加賀市加茂町出典
木下水源長野県上伊那郡箕輪町中箕輪12886-2出典
強清水岐阜県中津川市神坂出典
延命水鳥取県日野郡日野町下榎出典
桐の水徳島県徳島市加茂名町庄山出典
明神池名水公園熊本県阿蘇郡南阿蘇村吉田出典
安井大分県佐伯市城下西町3出典
岩上湧水大分県臼杵市佐志生出典
延命水大分県臼杵市中津浦858出典
神の井大分県佐伯市日向泊浦517出典
観音の水大分県臼杵市深田出典
タタラ迫水飲場大分県国東市国見町小熊毛出典
インリンジャナガー沖縄県国頭郡国頭村比地出典
メージンジャナガー沖縄県国頭郡国頭村比地出典

持ち帰ったあとのこと

湧き水は、汲んだ時点から容器の中で時間が経っていきます。
水道水のように消毒の効果が残り続ける水ではありません。
現地の掲示で保存方法や使い切りの目安が示されている場合は、それに従うのが確実です。

なお、「何分沸かせばよいか」については、探した範囲では国も自治体も具体的な時間を示していませんでした。
そのため、ここでも数字は書きません。
実際の取り扱いは、現地の掲示と所在自治体の案内に従ってください。

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